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経済読み物としか評する価値がない

 
 先日、カリスマ経営者の一人が野口悠紀雄氏の主張が近いことをブログに書いた。以前から少し興味のあった『経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか』を購入した。

 読んでみて「経済の読み物以上の価値はない」と評する他ない。なぜなら経済学の知見と無縁だからだ。トンデモな部分は多い。例えば、リーマンショック以降、日本は立ち直れない原因は産業構造の転換に失敗したからと本書は主張する。だが、その時に生じたデフレギャップはどれほどで、そのデフレギャップをマクロ経済政策でどう対応したかという経済学話は一切書かれていない。日本が欧米並にデフレギャップに対応して、なお経済回復が停滞すれば「産業構造の転換に失敗した」という著者の主張にまだ納得できるが、実際には比較すべき状況になっていない。日本が外需依存経済であっても、サブプライムローンの直撃弾を受けている欧米よりも悪影響を受けたのは、日銀による金融緩和が欧米と比較して不十分だったことを意味する。

 終章の著者による提言も多くは納得しがたい。
 「第一に必要とされるのは、古いものの生き残りや現状維持に支援を与えないことだ。その理由は、古いものが生き残っていけば、新しいものが生まれる余地がないからだ。また、「このままでは生き残れない」と認識することが、変革の最大のインセンティブとなるからだ。」(P324)という。「古いものが~」というが、不況の現在の日本では人や物は余っているし、変革を本気で望んでいる。「新しいものが生まれる余地がない」とは到底言えないだろう。野口氏が手本とするアメリカだって世界有数の農業大国である。その理屈だと「古い農業が残っているから、IT産業は生まれない」ということになってしまう(笑)。
 第二の「21世紀型グローバリゼーションの実現」は別に良いして、第三の「高等教育の充実」だ。社会人教育も含め高等教育を充実すること自体は悪くはない。運良く私は恵まれていたが、通信制大学でさえスクーリング(面接授業)や科目修得試験の日程調整は大変だ。だが、経済が停滞する時期に高等教育を充実させることは困難だ。なぜなら研究職を含めた採用が減少するからだ。雇用の問題を無視して、大学院の定員を増やせば、高学歴ワーキングプア量産を加速することになる。それに入学しようとも学費の工面も困難になる。進学による失敗や就職後の失業を恐れて公務員や大企業志望を強めており、若者は野口氏の提言とは逆に保守化しているのだ。それも若者にとって合理的な判断に他ならない。

 本書は最後に「謙虚さを取り戻し、優れたものに学ぶ勇気を持つこと。いまの日本で最も求められているのは、このことだ。」(P335)という主張は全面的に同意できる。私からは言わせれば、「著者が謙虚さを取り戻し、優れた(というよりも標準的な)マクロ経済学を学ぶ勇気を持って欲しい」のだ(爆)。そうすれば、デフレ容認という考え方が出ようがない。変革が求められているのは、実は著者自身でもあるという自覚が足りないようである。

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百おやじ

Author:百おやじ
 男性 仕事はあまりできないが多少の資格はある。
 経済・自作PC関連・メイド喫茶等に興味を持ち、趣味で日本大学通信教育部経済学部を卒業したかなりの変わり者。

 
 
 
 
 
 
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