日経新聞で連載された『やさしい経済学-名著と現代「ハイエク「自由の条件」』が昨日終了した。この連載を読むきっかけは竹森俊平慶應義塾大学教授が執筆したことだが、興味深く読ませていただいた。
私は、90年代後半以降デフレに苦しむ日本経済の経験からすると、マクロ経済学を否定するハイエクの思想は賛成できない。しかしそれ以外の点では共感できることも多いのである。
最初にお断りしますが、これ以降の意見は私の勝手な解釈です。
第1に「市場の失敗よりも政府の失敗のほうがはるかに大きい。従って社会主義はうまく行かない」という主張である。現在では当たり前の考えになっているが、社会主義やケインズ流の裁量的経済政策思想が強い時期にあってのこの発言は素晴らしい。
第2に「市場や政府に何が出来て何が出来ないかをはっきりさせる「否定」の思想を優先させる」という主張である。「中身が不明である構造改革さえ行えば景気が回復する」といった構造改革主義が盛んであった経験からすれば、「何ができないか」をはっきりさせる価値は失われていない。
第3に「民主主義と自由がまったく違う概念である」ことを主張していることである。民主主義は今までの政治制度のなかでは最善ではあるが、民主主義によって最善でない政策や個人の自由が侵される可能性があることが指摘されている。
最後に「直感で経済を考えることを否定する」ことである。直感で経済を考えることは、理論やモデルの無視すなわち経済学の自己否定につながるのだが、経済学の専門家の一部がなぜかやるんだよな(笑)。
このように考えると経済思想家としてのハイエクの功罪は「功」の方が多いといえる。経済思想家で現在一番罪深いのは、シュムペンターの創造的破壊であろう。詳しい創造的破壊批判は竹森先生の『経済論戦は甦る』を読んでみてください。以前に書いたように文庫化されたので手頃な値段になったので是非読んでみてください。(注)本の話題は多少古いです。